嵐が丘(上) (岩波文庫)
エミリー・ブロンテ(著),河島 弘美(翻訳)
おすすめ度
Riches I hold in light esteem.
And Love I laugh to scorn;
And lust of Fame was but a dream
That vanished with the morn -
And if I pray, the only prayer
That moves my lips for me
Is - 'Leave the heart that now I bear,
And give me liberty.'
Yes, as my swift days near their goal,
'Tis all that I implore -
Through life and death, a chainless soul,
With courage to endure!
ブロンテの考える"a chainless soul"すなわち「自由な魂」を持った者の哀しみが、この物語では描かれている。
身分違いの恋を成就させることができず、発狂死を遂げた女主人公キャサリンの亡霊は、童女の形をとってヨークシャーの荒野を彷徨う。
現在と過去、夢想と現実とを巧みに織り成して、物語は読む人を、人間のこころの不思議へと誘うのだと思われた。
「ねえ、ネリー、わたし、もし天国へ行ったら、とってもみじめな思いをすると思うの…
地上に帰りたくて胸が張り裂けるほど泣いたら、天使たちが怒って、わたしを荒野に放り出したんだけど、落ちたところが嵐が丘のてっぺんで、嬉し泣きして目がさめたわ。」
「穏やかな空のもと、ぼくは墓のまわりを歩きながら、ヒースや釣鐘草の間を飛ぶ蛾を眺め、草にそよ吹くかすかな風に耳をすませた。
そして、こんな静かな大地の下に休む人の眠りが安らかでないかもしれないなどと、誰が考えつくだろう、と思うのだった。」

物語は主人公にとって運命的であったであろう恋愛を、あっさりと家柄とか何やらで踏みにじられ、そのいたたまれない愛憎を、人の苦しみこそが我が喜びとばかりにネチネチと、グリグリと、嫌がらせを繰り返し、やがては家系の崩壊にまで追い込んだ主人公が、それでも何のカタルシスには成り得なかったという悲劇。ストーリーはだいたいが1人の家政婦によって語られるスタイルで、19世紀のイギリス版「家政婦は見た」というカンジ。オペラとか(できるだけ仰々しいヤツ)聴きながら読むと雰囲気でるかも。もちろん、スコッチウヰスキーも忘れずに。




