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紐解かれる世界と危うくもそこをひた歩む彼らの物語

この小説が良いなと思ったのは、何より全ての伏線を回収していること。 ゲームなどで『？』と思ったこと、ゲーム内では『G.U.』に関係あってなかったような、でも気になる『楚良』についてなどが丁寧に拾い上げられストーリーを織り成してくれます。 力だけでは辿り着き得ない結末への道の先、終末でオーヴァンがハセヲに求めたものは・・・・・・真実は理解してこそ訪れるものか。

ストーリー自体はゲームともTRILOGYとも全く違う道筋を辿るこの小説版ですが、ゲームには『ゲーム性』、TRILOGYでは『映像美』があったように、この小説では小説ならではの文字にしか成しえない『より深い説明性』を備え、『.hack//G.U.』という物語の世界がどのようなものなのかをより深く知りたい、という方には是非オススメいたします。

精神面に特化された「.hack//G.U.」を見ましょう

「おれを斃せ」
　前巻のラストで真の三爪痕──改造した左腕にAIDAを宿したAIDA=PCとしての正体を現したオーヴァンに戦いを挑むもあえなく返り討ちにされたハセヲ。
　オーヴァンを斃すには巫器だけでは足りず、更に何かが必要と痛感し、亮はオーヴァンと関係を持つ者たち、令子は『黄昏の碑文』などからその手がかりを探そうとします。しかしそんな中、CC社は『The World R:2』のサービス停止を発表し、『The World』そのものが消滅する危機に陥ります。
　システム側であるハセヲたちG.U.さえもログインできない状況で、ネタバレになるので詳しいことは書きませんが“裏口から手引きをして貰って”入った後、ハセヲは最後の戦いへ踏み出すことになります。
　その最後の戦いの場所へハセヲが向かう道は、絵にしたら『試練』と題名が付けられるとありますが、そこではハセヲが『The World R:2』での出会いや思い出が出会った人々の形を借りて次々と現れ、最後は『The World R:2』以前の自分自身と向き合うことになります。正直過去というのはプラスの思い出だけでなく、恥ずかしいこと、悔しいこと、悲しいことなどといったマイナスの思い出の方が得てして印象深いもので、ものによってはそういうのを思い出す頭を拳銃で吹き飛ばしたくなるほどの思い出さえあると思います。そうした過去と正面から向かい合い、受け入れる過程はまさしく『試練』と言う名にふさわしいでしょう。
　最初から小説版を読んでいる方ならもう分かってると思いますが、作中の設定はゲームや漫画とかなり違ってますが、そこは割り切って読むべきでしょう。むしろ「.hack//G.U.」が持つ面の一つと取って、ゲームや漫画では語られない『The World』を形作る哲学、人智学、仏教の要素を多少難解ですが理解する術として読むのがよろしいかと思います。