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聖書―その歴史的事実 (NHKブックス 250)
価格:¥ 966
新井 智(著)
おすすめ度
新井 智(著)
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信仰的事実発見のための歴史的事実の解明
1926年生まれの教授が、前年のNHK放送をもとに、1976年に刊行した聖書の全体像の入門的解説書。著者は、聖書記者との同化による「信仰的事実」の発見へと読者を誘うために、聖書学の成果(ユダヤ・ヘレニズムとの関係、様式史研究による生活の場の探究)に基づき、まず聖書に関する歴史的事実と聖書記者の表現方針を本書で提示しようとする。それによれば、旧約聖書は主としてJ文書(前850年頃、牧畜的な南王国ユダにて成立、文学的、起源説話多し)、E文書(前750年頃、農業的な北王国イスラエルにて成立、擬人化されないエロヒム神信仰、倫理的問題への関心)、P文書(前500年頃=捕囚後、バビロンにて成立、祭司的、精神的、奇蹟の誇張、機械的形式的、数字・系図重視)の合成であるとされ、聖書の記述をその3文書に還元することによって、天地創造(天地創造〜バベルの塔)、族長物語(アブラハム〜ヨセフ)、モーセによる出エジプトと唯一神信仰の確立、部族連合(ヨシュアによるカナン侵攻〜士師時代)から統一王国形成へ(先見者サムエル〜救世主の原型ダビデ)、南北王国滅亡期の預言者時代(ホセア〜第二イザヤ)、レジスタンス文学(エズラ・ネヘミヤ改革の功罪〜ダニエル書の終末思想)の記述に込められた、著者たちの意図が解読される。次いでローマ帝国治下、終末思想全盛期に生きたナザレのイエスが、律法遵守よりも地の民に寄り添うことを重視し、周囲の無理解の中、神の国実現の捨て石になろうと決意し、十字架上で亡くなった経緯が説かれ、その死と復活への弟子達の素朴な信仰こそが、生命の宗教としてのキリスト教を成立させたことが強調される。キリスト教はその後、使徒パウロの原罪意識を踏まえた福音主義(共観福音書へ)を経て、長老ヨハネのギリシア思想を踏まえた普遍主義に至って、世界宗教化したとされる。読みやすく有益。


聖書の教養的入門書
著者は冒頭で述べる。「聖書を知らずしてあらゆる分野の西欧文化を本当に理解するのは不可能である」「聖書の全体像がわかり、歴史的事実が解明され、客観的に納得できるように説明してあり、しかも聖書のエッセンスを読みとれる入門書があればどんなに便利か」そのような動機をもとに著された聖書入門。著者は、資料の検討によって歴史的事実を明らかにすることから宗教的存在としての聖書の記述の「信仰的事実」を明らかにしようとするアプローチをとる。例えば旧約聖書では、その元になる資料としてソロモン以降のユダヤ人王国の南北分裂期に成立したJ文書、E文書とバビロン捕囚期に成立したP文書から編纂されたとし、そこから天地創造、アブラハム、イサク、ヤコブそしてモーセの時代の物語の解明行なっている。旧約から新約の主要なトピックが分かりやすくまとめられており、教養として聖書を読むための教養的入門書として評価できる。

