「ゲバラを脱神話化する」
価格:¥ 1,575
太田 昌国(著)
おすすめ度
太田 昌国(著)
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「解放-英雄の、そして英雄からの-」
チェ・ゲバラ。その名に馴染みのない人も、戦闘服に身を包んだ彼の肖像にはどこかで出会ったことがあるだろう。キューバ革命の後もゲリラ戦士として国際的な革命闘争に身を投じた略歴を持ち、個人的な成功を夢見る医師から貧困という社会の病を治癒する革命家への転身というロマンチシズムを体現したがゆえに、ゲバラは今なお英雄として人々を魅了する。本書はしかし、「革命の英雄」としての従来のゲバラ像を解体し、等身大の人間として彼を捉え直した秀作だ。著者は、すべての価値を金銭に変えてしまう資本主義や「互恵」という名の搾取の横行する自由市場を批判し「他者が受けている苦しみを感じとる感性」の復権を提唱したゲバラの遺産を再評価する一方で、「軍隊というものは本質的に非民主主義的なものである」として民衆に対する指導部の優越性を最後まで疑うことのなかった彼の限界を容赦なく暴き出す。本書の圧巻は「「解放」あるいは「革命」の過程では確かに不可欠の役割を果たしたに違いない「旧」ゲリラ隊や「旧」反乱軍がそのまま国軍となって、その社会のエリート層を形成し、社会全体の「軍事化」を象徴している現実を批判的に捉えること」というくだりだ。解放が新たな抑圧を生む皮肉は「解放者」に対する私たちの過度のロマン化を抜きに語れない。ある意味では私たちが「解放者」を「抑圧者」に育て上げてしまうのだ。「軍隊を常備しつつ、常にその強化を計りつつ、「平和」というお題目が唱えられているだけの、この世界風景は虚しい」とする著者の指摘を真摯に受け止め、そろそろゲバラを彼自身の偶像から解き放つべきなのだろう。なぜなら歴史の創造に立ち合う悩みも迷いも生身の人間のものだから。英雄が人々の理想としてしか生きられないのに引き換え、ありのままの人間は過ちを繰り返しながら成長していくことができる。もう伝説はいらない。ゲバラの、私たちの、本当の解放のために。


